蒸留の舎ではファームで刈り取ったラベンダーからエッセンシャルオイルを抽出しています。
ラベンダーの刈り取りがピークを迎える7月下旬〜8月中旬には、抽出されるラベンダーのオイルと蒸留水の香りが蒸留の舎から漂ってきます。
ラベンダーはもともと香料となるエッセンシャルオイルを採るために栽培が始まった植物です。かつて富良野地方にはいくつも蒸留工場があったのですが、合成香料の台頭により、ラベンダーとともにその姿を消してしまいました。
ファーム富田では1980(昭和55)年に独自でラベンダーの蒸留を再開、2004(平成16)年にはかつて使われていた蒸留機を復元させ、「農作物としてのラベンダー」という本来の姿を保ちながらラベンダー栽培を続けています。
1ヶ月ほどで見頃を終えてしまうラベンダーも、オイルにすることでその香りをいつでも楽しめるようになります。
ファーム富田ではラベンダーの蒸留方法としてはもっとも一般的な水蒸気蒸留法を使っています。
釜の中に詰め込んだラベンダーに蒸気を通して、オイル成分を揮発させます。揮発したオイル成分はラベンダーの中を通り抜けた蒸気と一緒に、冷却槽で冷やされ、蒸留水と混ざった状態で出てきます。それを油水分離槽でオイルと蒸留水に分けていくのです。
ラベンダーの品種などによって採れるオイルの量は多少異なりますが、1kgのラベンダーから6〜8ml、1株のラベンダーから1.2〜1.5mlしか採れない貴重なものです。
蒸留の舎には、ファーム富田で独自に設計した、60kgのラベンダーが入る小さい釜を持つ蒸留機が1基、200kgのラベンダーが入る大きい釜を持つ蒸留機が3基あります。200kgの蒸留機はかつて富良野地方でラベンダー栽培が盛んだったころの蒸留機を2004(平成16)年に復元したもので、2006(平成18)年に蒸留の舎を増築して2基増設しました。多い日には1日で約3tのラベンダーを蒸留します。
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刈り取ったラベンダーを蒸留釜に詰めます。蒸気が素通りしないよう、足で踏み固めてぎっしりと詰め込みます。
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蒸気が漏れないよう、しっかりと蓋をして蒸気を送り込みます。
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蒸気を送り込んでから15分ほどで、白い湯気が冷却槽の出口から噴き出します。この白い湯気はラベンダーの成分の中で最も揮発性の高い成分です。工場の中はラベンダーの香りで一杯になります。
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油水分離槽の中に入ったオイルは、蒸留水よりも軽いので上に浮いていきます。上に浮いたオイルを分離槽の水位を調節して、ビーカーに出していきます。この時、水位を誤ると蒸留水が一緒に出てきてしまい、あっという間にビーカーがいっぱいになり、あふれ出します。
- 湯気がおさまり始めると水が出始めます。はじめのうちはほとんどが蒸留水なのですが、5分ほどするとオイル成分がでてきます。
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開始から30〜60分くらいが、いちばん多くオイルが出てきます。糸を引くように流れ、ビーカーに溜まっていきます。オイルの抽出量が減ってくると、ポタポタと垂れるようになり、約90分でオイルの抽出は終了します。
- 抽出したばかりのオイルは香りの雑味が強いので、ガラス瓶やステンレス容器に密封して、ひと冬冷暗所で寝かせ、香りを安定させてから、製品に使用されます。
- ラベンダーのどの部分を蒸留するのですか?
- オイル成分が最も多いのは花の部分ですが、茎や葉にもオイル成分が含まれています。剪定を兼ねて刈り取っていますので、刈り取った茎から上を全部使います。
- どんなラベンダーからいいオイルが採れる?
- 満開のラベンダーが一番です。つぼみの状態だとあまりオイルが採れません。また品種によってもオイル成分が異なってきます。
ファームの中では「おかむらさき」からいちばん品質の良いオイルが採れます(ラベンダーの本場のプロヴァンスでも1990年に表彰されています)。
- 蒸留を終えたラベンダーはどうなるの?
- 堆肥にしてから、肥料として畑へと戻します。
蒸留を終えたばかりのラベンダー(とても熱いです)
ラベンダーオイルは花人の舎をはじめ園内各売店にてお買い求めいただけます。
ラベンダー蒸留水は7月中旬頃より主に蒸留の舎にて販売いたします。